トークイベント「マタハラの原点!長時間労働とジェンダー問題を考える」(東京大学教養教育高度化機構 共催)

6月24日(土)、東大駒場キャンパスにて、長時間労働とジェンダー問題をテーマにしたトークイベントを開催いたしました。
当日は、高校生・大学生(ドイツからの留学生も!)からシニア男性まで、幅広い世代の約40名の方々にご参加いただきました。


1部:DVD上映
第1部では、参加者に「マタハラ理解度テスト」を受けていただき、マタハラNetが監修を行った「マタハラ防止DVD」を上映しました。

第2部前半:基調講演
厚生労働省内閣官房働き方改革推進室企画官 河村のり子氏

第2部前半は「『働き方改革』がやってきた」というテーマで、河村さんにご講演いただきました。
冒頭で河村さんは、女性が活躍できない理由として、

(企業が女性のことを)①「採っていない」、②「育てていない」、
(働く女性にとって)③「続けられない」、④「昇進できない」

という4つの「壁」を指摘。
①「4割弱の企業は女性採用なし」
②「営業、生産部門は7割の企業で男性が9割以上」
③「5割の女性が第1子出産を機に退職」
④「女性の管理職(課長級以上)は8.7%」
というデータを提示し、その根底には「長時間労働」×「性別役割分担意識」があることを強調しました。

我が国の人口減少(少子化)、労働力不足を招いている大きな要因は、
①「雇用の安定性や継続性」
②「仕事と生活の調和の度合い=ワークライフバランス」
③「育児への不安」すなわち「出産・子育てと働き方をめぐる問題に起因することが大きい」
と豊富なデータを駆使してレクチャーして下さいました。

少子化の時代に労働力の減少、経済の停滞を食い止めるための労働参加を促進するためには、長時間労働の是正と、同一労働同一賃金への法整備、制度設計が不可欠である、と「働き方改革」の重要性を行政の立場からお話しいただきました。

 

2部後半:トークショー
■モデレーター
東京大学教養教育高度化機構特任准教授・マタハラNet理事 坂口菊恵
■スピーカー
東京弁護士会男女共同参画推進本部事務局長 圷(あくつ)由美子弁護士
ダイバーシティコンサルタント(兼務 東レ経営研究所) 渥美由喜氏
厚生労働省内閣官房働き方改革推進室企画官 河村のり子氏

最初に「かえせ☆生活時間」プロジェクトを推進している圷弁護士から「長時間労働をなくそう」という問題提起が。圷弁護士はマタハラNet産みの親のおひとりですが、ご自身の育児体験も踏まえて、「生活のために必要な時間を確保できることは、人としての最低限の権利であり、各人の生活時間は、その人だけではなく、家族、仲間、地域、社会のもの」と主張されました。

生活時間確保の実効化のため、1日24時間のうち、生活リズム確保のためにどうしても譲れない「生活コアタイム」例えば育児、介護をしながら働く者であれば、育児、介護される者を迎え、寝かしつけるまでの時間帯)という新たな時間帯の概念の創設の必要性を提唱されました。

次に登壇された渥美さんのユーモアをまじえた軽妙なトークに会場も和みました。人口減少社会では最低でも「一人三役」が重要で、市民は「家庭人」「職業人」「地域人」であることが求められ、これを実践するためにはムダを減らすこと。そして企業には「経済性」「人間性」「公共性」。効率的な働き方を実践している企業は業績が向上しており、また、社員の生活に優しく、社会的課題にも取り組む企業でなければ生き残れない、というお話でした。

最後に質疑応答が行われましたが、登壇者をも唸らせた高校生、仕事と育児の両立に悩む女性、女性の参加が少なくて悩んでいるNPO法人主宰の男性他たくさんの方から質問が寄せられました。

 

最後に

女性も男性も「仕事するために生きている」のではなく「生きるために仕事をしている」のであり、生活者視点を無視した長時間労働は個人にとっても企業にとっても解決すべき重要な問題です。
圷さん、渥美さんのお話を伺って、確かに日本はヨーロッパの先進国と異なり、「政治システム(行政)」、「経済システム(企業)」はともかく、三大要素のひとつである「社会システム(地域)」がまだ十分機能していない印象を受けました。ワークライフバランスといっても、会社と家庭との行ったり来たりでは、個人も社会も今後持続していかないと思います。

今回のテーマは「ジェンダー問題と長時間労働」でしたが、それぞれ異なる立場・・・「行政(厚労省)」、「司法(弁護士)」、「経営(コンサルタント)」・・・で活躍されている方々が、同じベクトルをもって発言されていることに感動しました。

また、登壇者のみなさまからトークの冒頭で、マタハラNetに対する関わり、熱い想い、激励の言葉を頂きました。マタハラNetはこの6月で法人化されて2年が経ちましたが、この間、代表理事が交代するなど、決して順風満帆とはいえない道を歩んで来ています。
今回の登壇者のみなさまが、マタハラNetの起ち上げから、そして現在も変わらず、あたたかいエールを送り続けてくださることに、深く感謝の意を表します。

今後もマタハラNetは、マタハラ被害者、企業双方に寄り添いながら活動を続けていきたいと思います。

文責:山名芳高(NPO法人マタハラNet理事)